星のかけらを集めてみれば - 記憶のかけらは風に乗って -

作:澄川 櫂

9.ショウちゃん

「きゃあっ!? な、なになにっ!?」
 突然、真っ暗なところに取り込まれてパニクるミーナ。あのサンショウウオの顔が見えた、てことは、あたし、飲み込まれちゃったんだよね。食べられちゃったんだよね。
 と、
「落ち着いて。別に食べたりしてないから」
 すぐ近くで男の声が聞こえた。え? と声のした方に目をやると、ミーナと同じくらいの背丈のサンショウウオが、後ろ足立ちしてこちらを見つめていた。
「ごめんね、ビックリさせて。でも、こうしないと上手く話せないみたいだったから。僕にもっとパワーが残っていれば、こんな事しないで済んだんだけど」
 ぱたぱたと前足を動かしながら、サンショウウオが口にする。きょとんと声もなくミーナが見つめていると、彼はしばし小首を傾げ、ようやく気付いてぽんと両前足を打った。
「あ、そうか。この生き物はこんな風にヒトと話したりしないのか。失敗したかなぁ」
 面目なさそうに、片方の前足で頭の裏をかく。器用だ……。
「えっと、化け物みたいに思うかもしれないけど、これは仮の姿だから気にしないで」
「……変身してる、てこと?」
「まあ、そんなとこ。説明が難しいんで堪忍してね」
 にっ、と笑うサンショウウオ。それがまたどうにも可愛らしくて、ミーナはすっかり毒気を抜かれてしまった。
「で、あなたは誰?」
「誰と言われてもなぁ。ここ、としか答えられないし」
「……は?」
「僕はここの思考体が生み出した疑似人格の一つに過ぎないからね。外界探索用ボディ制作の必要上、こうした形を取っただけで。僕そのものに固有の形は存在しないんだ。そもそもこの姿は僕の一部であって、全体と同意じゃないから」
 ミーナの頭の中が大量の「?」マークで埋め尽くされる。
「……ごめん。まったく解んない」
「うーん……」
 彼は少し考える素振りを見せると、
「この遺跡に宿った精霊の一人、と言えばイメージできる?」
 と言った。
「えと、付喪神みたいなもの?」
「つくもがみ?」
「古くなったものに宿る意志のこと。善いのも悪いのもいるから気をつけなさい、て、お婆ちゃんに教わったんだけど……」
「ああ、近いかも。さっきの部屋に柱みたいのがいっぱいあったでしょ? あれ全部が僕の本体だから」
 ようやくイメージが伝わって嬉しいのか、サンショウウオは万歳しながらその場で回ってみせる。
「そんなわけで、この格好で許してちょうだい」
「はあ……。よく解んないけど、まあいいか」
 おどける様子に呟くと、ミーナは彼に名前を尋ねた。
「無いよ」
「……え?」
「僕を指す記号はいくつかあるけど、こうして会話している“僕”を意味するものではないから。ここ、としか答えられない、て言ったでしょ」
 いったん、そこで止めるサンショウウオだったが、それではさすがに不親切だと思ったのか、
「だから、君の好きに呼んでくれて構わないよ」
 と続けた。
 すっかり調子を狂わされた格好のミーナは、両腕を組んで考え込んでしまう。と、少し意地の悪いことを思いつき、にたりと微笑んで言ってやった。
「じゃあ、ショウちゃん。あなたのことは、ショウちゃん、て呼ぶわ」
 声の感じからすると男の人、それも年上なんだろうけど、この際、ちゃん付けで呼んでやれ。話し方や仕草が子供っぽいし、いっそお似合いだろう。
「ショウちゃん、ね。了解」
 が、そんなミーナの密やかな思いとは裏腹に、彼はその名前を気に入ったようだ。嬉々としてぺこりと一礼する。
「僕は今からショウちゃん。こんにちは、僕、ショウちゃん。君の名前は?」
 ……どうも“ちゃん”までを含めて名前と取ったらしい。性別や年齢に応じた敬称というものを知らないのか。それとも、そもそもそうした概念を持っていないのか。
 いずれにせよ、ささやかな仕返しが不発に終わったことを知ったミーナは、諦めて嘆息すると、自分の名を短く告げるのだった。
「よろしく、ミーナ」
 そう言って、ショウちゃんは両前足をぱたぱたと振った。途端に周囲が明るく開け、大小様々の柱が立ち並ぶ光景が視界に戻る。
 一瞬、出してくれたのかと思うミーナだったが、体を覆う感触はそのままだ。自由に動かせはするけれど……。
「ミーナ!!」
 その思考をリュートの声が遮った。我に返って振り向くと、紐のようなもので柱にがんじがらめにされたリュートの姿が目に入った。
「大丈夫か、ミーナ。コノヤロー! ミーナをそっから出しやがれっ!」
 必死に拘束を抜けようとしながら喚くリュート。一方、ラッセルの声は聞こえない。
 慌てて彼の姿を探すと、リュートから少し離れたところで、ラッセルも同じようにして柱に縛り付けられていた。なぜか尖耳人トカリの姿に戻って。上気したように顔を赤らめ、ぐったりとしている。
「ちょ、ちょっと、ラッセルに何したの!?」
〈彼のこと? こっちが訊きたいくらいだよ〉
 抗議の声を上げるミーナに、ショウちゃんは困惑顔——少なくともミーナにはそう見えた——で答えた。
〈ちょっとだけ大人しくしてて欲しくてさ、しっぽのあたり押さえたら急に身悶えするんだもん。面白くて続けたら姿まで変わっちゃって、こっちがビックリ〉
 ……可哀想に。どうやらラッセルは敏感なしっぽを弄ばれ、完全に脱力させられてしまったようだ。
「本当に、変なことしてないのね?」
〈もちろん。警備の連中が攻撃しないよう登録した以外は、誓って何もしてないよ〉
「警備?」
〈さっき派手にやり合ったでしょ?〉
 あ、コウモリもどきのことか。て、まだいるの?
〈まあ、もうじき動かなくなるから、放っておいても良かったんだけどね。邪魔されてもつまんないから〉
 無意識に身構えるミーナの様子には気付かず、独り言でも言うようにやや声を潜めて続けるショウちゃん。が、すぐに元の調子に戻ると、
〈でも良かった。最後の最後にミーナが間に合ってくれて〉
 と言う。
「間に合った?」
〈僕はね、ミーナ。君の一族が来るのをずっと待ってたんだ〉
「あたしの……一族?」
「てめー、コノヤロ! 離せ! ミーナに変なことしたらただじゃ済まさねぇぞ!」
 オウムよろしく繰り返すばかりのミーナだったが、リュートのその罵声にはたと気付いた。目の前にいるショウちゃんの姿も声も、リュートには届いていないのだ。だから身体に縄が食い込むのも構わず、必死になってこちらに飛びかかろうとしている。
「ねえ、ショウちゃん、とりあえず二人を離してよ。このままだとリュートが怪我しちゃう」
〈僕を攻撃しないと約束してくれるなら。ミーナ、彼を説得してくれないかな。僕はただ、ミーナと話がしたいだけなんだから〉
「本当に?」
〈ほんとほんと。わざわざ透明になったのだって、ミーナとお友達に安心してもらえるよう、僕なりに気を遣ったからなんだし〉
「……私の声は向こうに聞こえるんだよね?」
〈もちろん。姿もちゃんと見えてるよ〉
 ミーナはリュートの方を向くと、大丈夫だよ、と笑って見せた。
「リュート、ショウちゃんは、んと、このサンショウウオさんのことだけど、あたしと話がしたいだけなんだって。でも、こうしないと上手く話せないらしくて」
「だってミーナ、飲み込まれてるじゃないか!」
「これ、本当の姿じゃないらしいの。付喪神みたいなもので、たまたまこんな格好をしてるんだそうよ。だから、飲み込まれてるのとはちょっと違うみたい。ほら、ちゃんと動けてるでしょ?」
「で、でもよぉ」
「下手に攻撃したりすると中のあたしもどうにかなっちゃうかもしれないから、大人しく見守ってて。あたしは大丈夫だから」
「お、おう……」
 どうにかなっちゃうかも、と言われては、リュートも斬りかかったりはしないだろう。
「……こんな感じで良い?」
〈お見事〉
 小声で確認するミーナに、ショウちゃんが笑う。こうして意識して聞いてみると、その声はミーナの頭の中に直接届いているような感じがした。
 そんなことを思っている間に、ショウちゃんはリュートとラッセルの拘束を解いていた。二人を捕らえていたロープのようなものは、生きているヘビよろしくくねりながら、手近な柱の中へと引っ込んで行く。
「リュート、ラッセルのことお願いね」
「ほ、ホントに大丈夫なんか?」
「あたしを信じて」
「……おう」
 頷いて、力なく床にずり落ちたラッセルの元へと駆け寄るリュートを見やってから、ミーナはショウちゃんに向き直った。彼の口の中にいるので変な表現だが、面と向かって話せる相手の姿がそこに見えるのだから仕方ない。
「これ、どういう仕掛けなの?」
 彼に向かって手を伸ばしながら、ミーナは尋ねた。見た目には彼の体に届いている。だが、まるでそこにはなにもないかの如く、ミーナの手は彼の体をすり抜けてしまう。
〈ごめん、ちゃんと説明してあげたいんだけど、あまり時間がないんだ〉
 申しわけなさそうに言うと、ショウちゃんは両前足をミーナに向かって伸ばした。思わず身を堅くするミーナに、
〈角、見せて。ミーナのちゃんとした姿を確認して、渡したいんだ〉
 と続ける。
「……何を?」
〈むかーし昔に君の一族から預かったもの。きっと、ミーナが知りたいと思ってることを調べるのに役立つよ〉
「えっ?」
〈知りたいんでしょ。自分のルーツを〉
 ズバリと言い当てられて、ミーナは驚くと同時に怖くなった。角のこともそうだが、彼はどうして、こんなにもあたしのことが解るんだろう?
 と、そんなミーナの心中を察してか、ショウちゃんは俄かに動きを止めた。つぶらな黄色い瞳で、じっとミーナを見つめる。
 まるで意外なものでも目にしたかのような仕草に、ミーナはハッとした。あたしは何のために、リュート達に無理をお願いしてまでここに来たの。ショウちゃんの言うとおりだからでしょ。だったら、なにも怖がることなんて、ないじゃない。
「……ゴメン。ショウちゃんの言うとおり。あたし、自分のことが知りたいの」
 帽子を脱いで真っ直ぐに彼を見つめる。
「だからお願い。ショウちゃんの知ってること、あたしに教えて」
〈そうこなくちゃ〉
 ショウちゃんは表情を崩した。とたとたと歩み寄り、ミーナの手を取るかの如く両前足を重ねると、触肢のようなものを背中から伸ばす。二本の触肢は、ミーナの角を優しく包み込んだ。
(あ……)
 ミーナは自分の頭の中に何かが流れ込んできたのを感じた。文字のような、言葉のような。躍るように、唄うように。ほんの一瞬の出来事だったけれど、ミーナの中で何かが変わったような、そんな感覚があった。
〈良かった。パワーがなくなる前に、ちゃんと役目を果たせて〉
 いつの間にか触肢を戻したショウちゃんが言う。そして何事か、ミーナが初めて耳にする言葉で続ける。だが不思議なことに、彼の口にした言葉の意味がミーナには解った気がした。そして、両目から自然と零れ落ちる涙——。
「ミーナ、大丈夫?」
「ど、どっか痛めたんか?」
 心配するラッセルとリュートの声に我に返った時、ショウちゃんの姿は消えていた。体を揺さぶられるまでもなく、自分を包み込んでいたものもどこかへ行ってしまったと判る。
「なあ、どこだ。どこが痛むんだ?」
「……大丈夫、どこも痛めてなんかないから」
 オロオロするリュートに笑って応えると、ミーナは指で涙を拭った。
「ちょっと、嬉しくなって」
「本当に、なんともない?」
 とラッセル。
「平気。ごめんね、心配かけちゃって。ラッセルこそ大丈夫?」
「う、うん。大丈夫」
「良かったぁ。——ショウちゃんは?」
「それが……柱の中に入っちゃった」
「え……?」
「嘘じゃねぇぜ。ほら」
 リュートに促されるままに視線を転じると、透明な柱の一つにショウちゃんの姿はあった。両手で抱えられるほどにまで小さくなって。
「ショウちゃん、どうしたの!?」
 慌てて駆け寄って声をかける。だが、ショウちゃんは顔を上げただけで無言。
「ショウちゃん?」
 その様子を不審に感じた時、ショウちゃんの入っている柱の隣、透明でない柱の一角に、なにやら文字のようなものが浮き出ているのにミーナは気付いた。一読して目を丸くする。
「……魔導書の古語文字に似てるけど、見たことない字だね」
 歩み寄ったラッセルが、横から覗き込んで言う。そう、それはミーナも知らない文字だ。けれども、なぜかしらミーナには、その意味が判るのだった。
〈ごめんね、ミーナ。もっと色々と話してあげたいんだけど、もうあまりパワーが残ってなくて〉
「ショウちゃん、もしかして、これって……」
 驚いて柱の中のショウちゃんを見る。彼は大きく頷いた。
〈そう。これが君の一族から預かっていたものの力だよ〉
〈詳しい仕組みは僕も知らない。でも、たぶん、ミーナの身体に先祖代々刻まれてきた記憶が、そうさせているんだと思う〉
〈文語体——君らが言うところの古語文字読むの、前から得意じゃなかった?〉
「ま、まあ……」
 次々と映し出されるショウちゃんの“言葉”に、少し気圧されながら頷くミーナ。
〈やっぱり。それはきっと、刻まれていた記憶の断片が知らず知らず結び付けられていたからだよ〉
〈さっき渡した物は、その断片を繋ぎ合わせるためのものなんだと思う。全部を理解できるようにするほどの量じゃないもの〉
〈でも、ミーナはオニ——人形や化け物なんかじゃ絶対にないよ。だって僕は、黄色の角を持つ“星追い人ナビ”の一族以外には、預り物を渡せないんだから。ミーナは間違いなく、両親から生まれたヒトの子だよ〉
「……ショウちゃん」
〈ライブラリをちゃんと参照出来れば、もっとうまく説明してあげられるんだけど……。ごめんね〉
「ううん、ありがとう」
 恐縮するショウちゃんに、ミーナはまたも浮かんだ嬉し涙を両目に湛えたまま、笑ってみせる。
「最初の言葉だけで、充分嬉しかった」
 自分を飲み込んでいたショウちゃんが離れる直前に送ってきてくれた、いくつもの言葉。その時にはあまりにいっぱいで、一つ一つ確かめられなかったけれど、こうして“会話”をしながら改めて噛みしめる彼の“言葉”は、ミーナを勇気付けてくれる。答えそのものではなかったが、それ以上に価値あるものに違いない。

 ——ミーナはミーナ。それを忘れなければ、いつか必ず、本当の自分に辿り着けるよ。だから自分を信じて。君はオニなんかじゃないんだから……。

「あたし、もっともっと探してみる。これからも調べ続ける。だってあたしは、こんなにも素敵な知識ちからを授かっていたんだもの」
 柱の中のショウちゃんは、満面の笑みとガッツポーズで応えてくれた。
「なあ、ミーナ。誰と話してんだ?」
 一段落したところを見計らったように、それまで黙って見守っていたリュートが遠慮がちに声をかけた。すると、
「僕の名前はショウちゃん。この遺跡に棲んでいる精霊さ。君達二人とももっと話してみたいけど、実は僕、そろそろ眠らなくちゃならないんだ」
 急にショウちゃんの声が辺りに響くのだった。驚いて辺りを見回すリュートとラッセルだが、ほどなく柱の中で欠伸をするサンショウウオの姿を見つけ、ようやく彼の声だと気付いたらしい。目を丸くして、食い入るように柱の中のショウちゃんを見入る。
「だから代わりに、保管庫の扉の開け方を教えてあげる。いくらか役に立つものもあると思うから」
 ショウちゃんのいる柱から何かがせり出してきた。長方形の窪みがある、ガラス板のようなもの。
「そこにお守りをはめ込んで」
「お守りを?」
 ミーナは首を傾げた。胸元からお守り袋を引き出すと、中身を取り出す。ミーナが拾われた時から手にしていた“星のかけら”を。
 それは赤みを帯びた半透明な三角形のプレートだった。色が付いているのは珍しいらしく、何かの手がかりになるかもしれないねと、お婆ちゃんもよく言っていたが……。
「これを、はめるの?」
 ショウちゃんが示した窪みは長方形だ。形がまるで違う。と、その時、
『あーっ!?』
 リュートとラッセルが揃って声を上げた。びっくりして戸惑うミーナをよそに、
「おいら、それと同じの持ってる」
「僕のお守りと同じ色だ!」
 と、口々に言いながら、それぞれ自分のお守りを取り出して見せる。驚くミーナだったが、二人も互いにそのことを知らなかったらしい。
「ラッセルも持ってたんか!?」
「リュートも!?」
「……うお、マジで同じだ」
「こんな偶然、あるんだねぇ」
 掌に乗せて見比べながら、揃ってビックリしている。ミーナもまた、同じようにしてその輪に加わった。三つ並べて比べてみるが、大きさや形こそ多少異なるものの、どれも同じもののように思えた。
「……ねえ、これ、うまく並べたら長方形にならないかな?」
 最初に気付いたのはラッセルだ。
「そうか?」
「だってほら、僕のお守り、ここの角にぴったり合うもん」
 言いながら自分の星のかけらを窪みの右端にはめ込む。
「僕の隣にミーナのを逆さまにして置いて、その横にリュートのを並べれば、ぴったりはまる気がするんだけど……」
「言われてみれば」
 ミーナはラッセルの言うように自分のお守りを並べてみた。リュートもまた、同様に星のかけらを窪みに置く。果たして三つのプレートは、びたりと長方形に納まった。
 途端、窪みの底から光が左から右へと流れる。すると——。

 シュッ……。

 空気が抜けるような軽い音と共に、壁の一角が横に開いた。その奥でうっすらと明かりが灯るのが判る。
「お、あれか?」
「……お守り、外しても大丈夫みたい」
「よっしゃ、行ってみようぜ」
 それぞれに星のかけらをしまって駆け出すリュートとラッセル。追いかけようと自分のお守りを手に取ったところで、ミーナは例の柱に別のメッセージが表れていることに気付いた。その内容を知って、はにかむ。
「……うん。ありがとう、ショウちゃん」
「どういたしまして。元気でね、ミーナ」
「バイバイ」
 ミーナは柱の中のショウちゃんに向かって、小さく手を振った。それに応えて両前足をぱたぱたするショウちゃん。やおら全身を震わせると、彼の姿は柱の奥へ溶け込むようにして消えた。
「おーい、何やってんだ、ミーナ」
「早くおいでよーっ」
「うん、今行く!」
 保管庫の入り口で呼ぶ二人に応えておいて、もう一度、空の柱を見つめるミーナ。
(バイバイ、ショウちゃん)
 心の中で繰り返してから、ミーナは二人の後を追った。