RGM-86物語

作:澄川 櫂

4.姿を変えて

 捨てる神あれば拾う神あり、という諺がある。凍結の憂き目にあったRGMー86プロジェクトだったが、その僅か数週間後に思わぬ形で復活することとなった。俗に言う「“ジムⅢ”計画」である。
 87年当時、連邦軍の主力をなしていたモビルスーツは、“ジムⅡ”と呼ばれる機体であった。一年戦争中に生産された機体を改修したRGMー79Rと、同規格で新造されたRGMー179が該当する。
 多少の性能向上が図られているとはいえ、基本的には七年前の設計である。老朽化が目立つ非力なマシンだ。だが、ティターンズに主導権を奪われた連邦軍本家への、新規設計機の配備は限られており、大半の部隊がこの旧式な機体を主力として運用することを余儀なくされていた。
 戦局が厳しさを増すにつれ、“ジムⅡ”の強化は切実な問題となった。多少大げさな表現を使えば、もはや一刻の猶予もなかったのである。
 ここでRGMー86プロジェクトが脚光を浴びたのは、皮肉にもその基本構造が旧来の構造を踏襲していたためであった。かの機体を改修した手法は、そのまま既存のジム系モビルスーツに転用可能だったのである。
 将来的に支援用途への転用が可能なよう、肩および腰部にミサイルポッド装着ラックを設ける設計変更が行われ、RGMー86試作機を再改修してテストが行われた。結果はもとより良好であり、「“ジムⅢ”計画」はなんの支障もなく実行に移された。
 本部は基本的にパーツ生産のみを担当し、装備機体の改装作業そのものは各拠点の責任において実施する、というのが本計画の骨子である。RGMー86の試作機は、生産ロット12機全機がこの新たなリファイン型、RGMー86Rへと改修され、アップデート見本として改装用パーツと共に各拠点へと送り込まれたのだった。

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