星のかけらを集めてみれば - 銀の羽根、輝いて -

作:澄川 櫂

7.銀の羽根、輝いて

「リュート! 頑張れーっ!」
 広場に設けられた闘技場に、ハープの声が高く響く。右手を軽く挙げて応えるリュートは、すぐさま二刀を逆手に構えると、腰を低く落として合図を待つ。この年の大会の決勝戦。対するは同い年のタンバ。村始まって以来の最年少決戦に、村人の誰もが固唾を呑んで見つめている。
 長老の右手が挙がる。こちらは村伝統の小斧を両手に持ったタンバが、それに合わせて構えを取る。涼しげな顔に赤みの強いオレンジ色の羽根が人気のタンバも、今は緊張に満ちた表情でリュートをひたと見つめる。視線の先にあるのは、タイミングを計りながら揺れるリュートのしっぽ。止まったときが彼の仕掛けるときだ。
 長老の右手が振りおろされる。上下に動いていたリュートの淡い緑のしっぽが、ややあってぴたりと止まる。
 瞬間、タンバは迷わず小斧を投げた。まずは左、次いで右。既に駆けだしていたリュートは、一投目を紙一重でかわすと、二投目は右の刀でたたき落とす。そのまま一気にタンバを目指すが、その背後を先に避けた小斧が戻って襲いかかる!
 だが——。
「……参った」
 その言葉はタンバの口からこぼれた。右後ろから狙った小斧を返した小刀で受け止めたリュートは、左の小刀をタンバの喉元に突きつけている。峰を返しての一撃は、紛れもない一等賞の証。
「勝者、リュート!」
 高らかな宣言にようやく勝利を知ったリュートが、大きく飛び跳ね宙で一回転する。西日に赤く輝く銀の羽根は、女の子に人気のタンバの羽根以上に、鮮やかなオレンジ色だった。

「銀の羽根、輝いて」おしまい